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水先案内人のおすすめ

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時代劇研究家ですが趣味は洋画観賞。見知らぬ世界に惹かれます。

春日 太一

映画史・時代劇研究家

マリグナント 狂暴な悪夢

「事前の情報は全く入れずに観た方がいい」 これは本欄でも時おり使う文章だが、本作もまさにそんな一本だ。 ジャンルが“ホラー”であること、監督がジェームズ・ワンであること、それに思いも寄らぬ展開が次々に起きること。押さえておくのはこの三点だけで十分。あとは1カットたりとも触れずに劇場に行って驚きが連続する展開に浸ってほしい。 観終えて気づいたことがある。それは、ワン監督と共に『SAW ソウ』を作ったリー・ワネル監督による去年公開の『透明人間』と通底する部分があることだ。 主人公が男性からのDVに苦しむ女性。親身になってくれる妹がいる。主人公はある事件の犯人に疑われ、無実を主張するも警察は聞き入れない……。 こうした共通点を眺めてみると、ホラー映画の最前線にいる作り手たちが「まだまだ弱い立場にある女性たちの闘い」に問題意識を置いていることをうかがい知ることができる。 ただ、内容はもちろん全く異なる。『透明人間』は古典を現代的な合理性でリブートし、「なるほど!」という納得で楽しませてくれた。 それに対して本作は、ひたすら「なんじゃこりゃ!」で楽しめる作品。従来のホラーのさまざまな要素を織り混ぜつつも、合理性より圧倒的なパワーと勢いと狂気で持っていく。 冒頭から連続する途方もないイマジネーションの数々に大いに興奮させてもらった。

21/11/12(金)

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