右かと思えば左、左かと思えば右、聖かと思えば俗、俗かと思えば聖……鈴木邦男は変幻自在に見える。いや、そうではない。右か左か、聖か俗かと規定するのがおかしいのだ。決して流行や周囲に振り回されない「鈴木邦男」という揺るがぬ軸を、この映画は描ききる。 右翼とか左翼とか、人は安易にレッテル貼りしてしまうが、鈴木はそんなに単純な思想家ではない。武闘派右翼でありながら、武闘派左翼にも共感する。木造アパートに住み清貧の暮らしをしているかと思うと、演劇やトークの華やかな舞台にも立ち「鈴木ガールズ」と呼ばれる女性ファンたちにモテる。そのユニークな半生が、彼の生きてきた時代の歴史と共に展開されていく。圧倒的に面白いドキュメンタリーである。だって、描かれている主人公が、圧倒的に面白い人なのだから。

20/2/2(日)