最初は父の影響で競馬にはまり早口の実況中継が評判となり、以来、競馬、野球、相撲、マラソン、ラグビー、盲導犬、映画、小説から、実人生に至るまで、熱を込めて語りきる「かたりの世界」を続けてはや20年。臨場感があるそのわけは記憶の仕方にあった。文字起こししたのを覚えるのではなく、映像を見ながらその場で頭に浮かんだ言葉を紡いでゆく、なので、常に実況中継なのだ。語らせてもらうご本人にインタビュウ、思いを自分に乗り移らせて自然に出てくる言葉を待つ。憑依と客観的な描写を交互に表出、飽きさせない。ソフトな声が、煽り立てがちな自伝かたりに、冷静さを保たせた表現になっている。ジャンルのない芸を確立し生きてくのがどんなに大変なことか。山田雅人の才能を持ってしても、だ。このレスリングジャンルを聴いたあとは、いつかどこかで、実のお父様、そして師匠の話をぜひ！　面白うてやがて哀しき爆笑芸であります。

19/9/27(金)