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水先案内人のおすすめ

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生きのいい日本映画を中心に、大人向け外国映画も

平辻 哲也

1968年生まれ 映画ジャーナリスト

ももいろそらを カラー版

最近、旧作のレストア版製作が増えている。しかし、本作は「モノクロ作品」で公開されたものをカラー版としてリリースしようという異色の試みだ。 本作は、間宮祥太朗と桜井日奈子がW主演した『殺さない彼と死なない彼女』などで知られる青春映画の旗手、小林啓一監督のデビュー作。10年前の2011年、第24回東京国際映画祭で上映され、日本映画・ある視点部門 作品賞を受賞。サンダンス映画祭など海外の映画祭でも絶賛された。 ある日、30万円が入った財布を拾った川島いづみ(池田愛)。ひょんなことから、財布の持ち主の佐藤の依頼を受けて、町で起こった、いいことを集めた新聞を作ることになる……。オリジナルは、元々カラーで撮影されていたが、「未来からみた今」というコンセプトからモノクロ作品として製作。このほど、小林監督がハードディスクにあったカラーの編集データを見つけ、「登場人物が生き生きしている」と感じ、カラー版を起こした。 きっちりカラーグレーディングもされ、鮮やかになった本作は今もその魅力をまったく失っていない。特に、レンズを開放値にして、背景をぼかした画は水彩絵の具のように美しく、登場人物の表情を切り取っていることが分かる。 少女たちが新聞作りに夢中になる、というストーリーは10年前ならでは。今製作されるなら、それはYouTubeに取って代わっているのかもしれない。だが、時代が変わっても、変わらないものもある。オリジナル版を観た人も、観ていない人も、さまざま新たな発見があるはずだ。

21/6/4(金)

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