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世界は美しい。と、毎日確認していたい。
山内宏泰
ライター
武田陽介 「Ash without fire here」
19/9/7(土)~19/10/26(土)
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルム
アーティスト・武田陽介の生み出す写真や映像は、一見するとひたすらに美しく、耽美的な世界に観る者を誘い酔わせることを主眼にしているかと思わせる。けれどそれらの像がどのようにしてつくられているかを知ると、見え方は揺らぐ。七色に輝く色彩が画面を埋める「Digital Flare」シリーズは、想定外の強い光をレンズの中に招き入れて、フレアやゴーストなどカメラ機構に「バグ」を引き起こしているのだ。光によって描き出されるはずの写真の像を、光によって壊してしまうという、なかなかに過激な行為がそこではおこなわれている。武田作品の画面に現れる透徹した美は、破壊と滅亡に美しさを感じてしまう私たちの本性に訴えかけているのかもしれない。金色に輝く水面を延々と映した新作映像も神々しい。永遠の時間と移ろい続ける瞬間の双方を、いちどきに目の当たりにするようで、どこか狂気を孕んでいるようにも思えてくる。
19/10/10(木)