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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

ソン・ランの響き

『ハイ・フォン: ママは元ギャング』(Netflix)の切れ味鋭いアクション、『サイゴン・クチュール』のベトナム版『プラダを着た悪魔』ともいうべきユーモア、『第三夫人と髪飾り』の歴史的風雪……それらベトナム映画の秀作群は、昨年も映画ファンを楽しませてくれた。 そんな元気いっぱいのベトナムから、今年も心温まる感動作が届いた。そのタイトルは『ソン・ランの響き』。名作『さらば、わが愛/覇王別記』を彷彿させる、演劇と友情の物語だ。 “ソン・ラン”とはベトナムの民族楽器のこと、「ふたりの(Song)」「男(Lang)」という意味もあるという。 舞台は1980年代のホーチミン市。取り立て屋ユンと、ベトナムの伝統歌舞劇“カイルオン”の花形役者リンとが出会う。ふたりは立場の違いから憎しみ合うが、“ソン・ラン”を媒介に次第に心を通わせていく。 “カイルオン”はいわばベトナム版のオペラで、劇中劇の演目『ミー・チャウとチョン・トゥイー』は、敵対する国の王子と王女が婚姻の契を結ぶが戦火によって引き裂かれる悲恋物語。 その劇中劇の悲恋と道行くように進む、ふたりの青年の悲劇の途中にはいくつもの美しいショットが挿入される。 例えば、停電の夜、月光が降り注ぐビルの屋上で過去を打ち明け合う幻想的な俯瞰ショット。妖気漂ようほの暗い路地裏の食堂のショット……。 監督は少年期に渡ったアメリカから帰国して本作がデビュー作となったレオン・レ。北京国際映画祭最優秀監督賞、ベトナム映画協会最優秀作品賞など、国内外で多くの賞を受賞している期待の新人監督だ。

20/2/21(金)

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