『ゲッべルスと私』に続く「ホロコースト証言シリーズ」の第2作目に当たる。本作で証言するマルコ・ファインゴルトは1913年生まれ、撮影当時は103歳という高齢だ。ユダヤ人の彼は1939年に逮捕され、アウシュヴィッツ・ノイエンガンメ・ダッハウ・ブーヘンヴァルトの強制収容所を生き抜いた。そんな彼の幼い頃から第2次大戦までの証言を主軸に、当時の記録映像と今なお続く反ユダヤ主義の言説を字幕で織り交ぜているが、戦前のウィーンで反ユダヤ主義が次第に浸透し迫害を強めていく証言は印象的だ。前作同様、モノクロ映像に浮かび上がるファインゴルトのシワの刻まれた表情とその語られる言葉に向かい合うことで、観る者は過酷な歴史を現在と未来への戒めとして心に刻み込むにちがいない。

21/11/19(金)