Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

歌舞伎とか文楽とか…伝統芸能ってカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

【一部公演中止】渋谷・コクーン歌舞伎 第十七弾『夏祭浪花鑑』

1994年の第一弾『東海道四谷怪談』では十八世中村勘三郎と中村芝翫(当時橋之助)が舞台前面の水槽に飛込み、大立廻りをくり広げ、観客の度肝を抜いた。その後も『三人吉三』など数々の歌舞伎の古典演目を原作から読み解き、新たな角度から光を当てて上演してきた渋谷・コクーン歌舞伎。その十七弾が上演される。今回はコクーン歌舞伎でもたびたび上演されてきた『夏祭浪花鑑』だ。団七九郎兵衛と市松親子に中村勘九郎と長三郎、団七女房お梶に中村七之助、一寸徳兵衛/徳兵衛女房お辰に尾上松也。また団七倅市松に勘九郎の長男の中村長三郎だ。 勘九郎、七之助、松也の三人がコクーンで顔をそろえるのは2014年の『三人吉三』以来。その当時の3人について勘九郎さんは思い出をこう語る。 「休憩時間も所かまわず3人で話し合いました。やはり『大川端』がポイントでしたね。あえて、下座音楽なし、台詞も七五調で言わないという枷を設けていたので。それらがないと僕らお手上げなのだと痛感しました。この公演後、次に七五調で台詞を言うときに、この時の経験がとても意味深いことだったのだと思い知りました」 七之助さんも「コクーン歌舞伎で『三人吉三』といえば勘三郎、福助、芝翫の、神的な三人吉三を見てしまっていますから辛かったですね。特にやはり大川端が」と語る。 松也さんも「初日直前まで、ほんとに全く手も足も出なかった。もうどうとでもなれ!と思い、あえてチンピラ言葉で七之助さんと大川端の台詞を言うことにしたんです」。 あともう一歩でフレッシュな3人ならではの『三人吉三』が掴めそうなのに……。2014年当時、そんな気持ちのままゲネ直前の囲み取材を迎えたという。「その間もこの取材が終わったら早く早く稽古したい! この時間すらもったいない!」とそればかり考えていたという七之助さん。囲み取材終了後、舞台稽古に飛んで戻り、何かをつかみ取ったという感触を得た。そのとき演出の串田和美さんから「マッティ(松也さんのこと)、よかったよ!」とようやくOKが。初日が無事終わった時、松也さんには込み上げるものがあったという。「後にも先にも初日の舞台挨拶で涙なんてあの時だけです(笑)。同志がいることが支えでした」と松也さん。 『夏祭』といえば様式美たっぷりの絵のように美しい惨劇を思い描くが、また一味違うコクーン歌舞伎ならではの一幕が楽しめそうだ。真夏の暑い浪花の男たちと女たちの、涙や汗が飛び散るリアルな群像劇となるにちがいない。

21/4/22(木)

アプリで読む