とてつもなく貴重な作品だ。生命が起こした奇跡としか言いようのない瞬間を捉えている。それがスクリーンに映った瞬間、稲妻に撃たれたような感動が全身を駆け巡った。感動では足りない、生命の力強さに対する畏怖と言うべきかも知れない。 本作は、内戦下のシリアで結婚し子供を授かった女性が撮影した映像で構成されている。毎日、爆撃の音が鳴り響き、病院で多くの命が失われてゆく日常を当事者の視点で撮影している貴重な作品だ。 焼け落ちたバスのペンキ塗りを楽しむ子供たち、爆撃で飛んできた金属破片で笑いながら暖を取る男性など、悲劇の数に負けないくらい多くの笑顔も映されており、戦時の日常とはこういうものなのかと驚かされる。絶対に見逃すべきではない傑作だ。

20/2/26(水)