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水先案内人のおすすめ

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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

逃げた女

ちょっと多作で、観る前は質が落ちていないかと心配はさせても、必ず観客を満足させてくれるのが韓国のホン・サンス監督です。本作は主人公のガミが5年に及ぶ結婚生活で一度も家を空けることのなかった夫の出張に合わせ、ソウル近郊に住む3人の女友だちを訪ねるお話。その3人は離婚したばかりの人や独身生活を謳歌する先輩らで、みな自立心旺盛。そんな彼女たちに「愛する人とは何があっても一緒にいるべき」という夫の持論を執拗に繰り返して呆れられてしまいます。やがて親密な会話の中に隠された女たちの本心がうごめき出しガミの中で少しずつ何かが変わり始めます。 何やら教訓めいた夫の持論は「愛すればこそ、命がけで」という正統派の考えのようにも見えますが、裏を返せば「愛とはもろいもの。だからこそ努力が必要」という現実を見据えての助言かもしれません。そもそも監督と主演のキム・ミニは共に「愛し合っている関係」と認めている仲。もしかすると監督は自身が起こした妻との離婚訴訟を念頭に作品を通じてキム・ミニとの熱愛の正統性を主張したかったのかもしれません。 映画では自己中心的で厄介な男ばかりが出てきますが、対照的にガミと女友達3人は個性的なうえ折り合いをつけるのがうまく、これはもう究極の女性賛歌と言えるでしょう。

21/6/9(水)

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