Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります

堀 晃和

ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。

ハッピー・バースデー 家族のいる時間

序盤に小津安二郎監督に言及するシーンがある。監督志望の次男が、食事の用意をしている庭で三脚を立て、家族を撮影しようとする。その恋人がカメラを見て言った。「テーブルが遠すぎる」。次男はすかさず反論する。「広角の固定撮影、小津の手法だ。舞台のように定点から家族をとらえる。誰か1人を主人公にはしない」と。恋人も言い返す。「じゃあ位置が高い。小津はローポジションよ。小津の画は違う」。 仏監督セドリック・カーンの最新作は、小津作品のように家族が主題だ。撮り方は異なってカメラは自由に動くが、細かくカットをつないで家族の間に通う複雑な心情を浮かび上がらせる。主演は大女優カトリ-ヌ・ドヌーヴだが、他の家族にも焦点が置かれ、それぞれの背景が描かれる。確かに「誰か1人を主人公にはしない」構成だ。 仏南西部、敷地に樹木が生い茂る邸宅で、アンドレア(カトリーヌ・ドヌーヴ)は夫と孫娘とともに静かに暮らしていた。自身の誕生日に、長男(セドリック・カーン)一家らが集まってきた。3年前から行方知れずの長女も現れて…。 心を病んだ長女の言動が、次第に家族の実像を視覚化していく。自作への出演が初めてという監督自身の演技も見所だ。

21/1/7(木)

アプリで読む