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日本で(多分)一番多くの映画を観る(年間800本!=新作、旧作も入れると…)映画評論家
野村 正昭
映画評論家
剣の舞 我が心の旋律
20/7/31(金)
新宿武蔵野館
木琴の音が激しく鳴り響き、エキゾチックな旋律を奏でる、ハチャトゥリアンの『剣の舞』の曲名を知らなくても、そのメロディーを聴いただけで幼い頃の記憶が甦る人も多いだろう。運動会の徒競走には欠かせない曲だし、筆者のように、思わず走り出したくなる衝動にかられたりして……。 この映画は、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチと並ぶソビエトを代表する作曲家ハチャトゥリアンの生涯を描くわけではなく、彼が『剣の舞』を生む過程だけにしてしまったのが面白い。第二次世界大戦下のソビエト、粛清の嵐が吹き荒れた時代。舞台公演の幹部からの圧力で、『剣の舞』はわずか一晩で書き上げられた。ハチャトゥリアン自身は『剣の舞』は代表作ではなく、他の作品が霞んでしまったことを嘆いていたという。歴史の皮肉な一面が描かれていて、実に興味深かった。
20/7/27(月)