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水先案内人のおすすめ

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平辻 哲也

1968年生まれ 映画ジャーナリスト

ドライブ・マイ・カー

村上春樹の原作を読んだ人は、あの短編小説が179分になるとは思うまい。短編集『女のいない男たち』の3作のエッセンスを盛り込んでいるが、原作にない部分のドラマがスリリングだ。 原作にもチラリと登場する『ワーニャ伯父さん』だが、その稽古シーンが大きな見せ場。さらに、原作『ドライブ・マイ・カー』に加えられた新たな結末もある。短編小説の楽しみは書かれていない余白やその後を想像したりして楽しむことだと思うが、映画は余白や継ぎ足しをしてなお、新たな余韻を残す。 この映画はあまり情報を入れ込まず、評判だけを手がかりに劇場に行くのがいい。その象徴が車。原作は黄色いサーブ900カブリオレだが、映画版は赤のクーペ。しかし、車は車であるし、サーブはサーブ。村上文学の良さを残しながら、映画は見事に濱口竜介監督仕様に作り変えた傑作。カンヌ国際映画祭での快挙は、当然の勲章だろう。

21/8/3(火)

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