カール・ドライヤー『あるじ』（9/25～10/1） シネマヴェーラ渋谷 特集「素晴らしきサイレント映画Ⅲ」（9/4〜10/1)で上映 「素晴らしきサイレント映画」特集は、垂涎のラインナップである。若い映画ファンに伝えたいのは、サイレント映画はトーキー以前の「発展途上」の映画ではないということ。 むしろ映画表現はサウンドのない時代に、映像だけで物語を凝縮して語る話法をとことん煮詰め、ひとつの絶頂期に到達した。だからサイレント映画の傑作はトーキー作品よりもぐっとスリムで緊密でさえある。そんな一典型が、カール・ドライヤー監督が昭和元年前後に作った『あるじ』。モラハラ夫から妻を解放した乳母が、その困った夫を再教育する。後に『奇跡』『吸血鬼』などの神秘的にして荘重な傑作で世界的名匠になるドライヤーならではの、軽妙かつ尖鋭なタッチのホームドラマは、今観てもさすがの切れ味。

21/9/23(木)