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水先案内人のおすすめ

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クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

アンティークの祝祭

「時をかける老女」の、ある一日の物語。 多分、軽度の認知症である老婦人が主人公。カトリーヌ・ドヌーヴが実年齢に近い役を演じる。記憶を失っているのか、忘れたふりをしているのか。劇映画なのだから、すべてシナリオがあると分かっていても、ドヌーヴ、大丈夫かと心配になるくらい、自然だ。その娘が実の娘、キアラ・マストロヤンニなのでリアルさが増す。 娘は単なる母への反抗から家出をしたというわけでもなさそうだ。息子もいたが死んだようだ。夫とも何かがあって、彼はすでにいない。 そんな謎が次々と提示され、やがて過去がフラッシュバックされ、だんだんとこの一家に何があったのかが、観客にも明らかになっていく。しかし、セリフで「あのときはああだった」と語るのではなく、あくまで映像で語る。その映像が本当の過去なのか、妄想なのか、幻想なのかも、曖昧。 古い屋敷、そこにある家具や、からくり人形、本、絵画などの小道具が、もうひとつの主役だ。屋敷は監督の祖母が暮らしていたもので、出てくる調度品やアンティーク人形なども、「本物」のようだ。映像は美しい。不気味なシーンも美しい。 その美しい映像の積み重ねが、ラストの衝撃を説得力のあるものにする。

20/6/4(木)

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