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杉本 穂高
映画ライター
家族を想うとき
19/12/13(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町
ケン・ローチは相変わらずぶれない。ギグ・エコノミーという新たな問題を取り上げているが、苦境に陥る労働者階級の根本問題はいつも同じ。 配送の仕事を得た男性が車の入手に奔走、しかし金が足りないので、妻の車を売ることを決断する。車のために車を売る矛盾から始まり、主人公家族はさらなる社会の矛盾と理不尽に襲われる。フランチャイズ契約の宅配ドライバーとして独立し、一国一城の主となったはいいが、実態は何の保証もない下請け業務に過ぎない。大怪我をしても配達の穴をあけられず、マイホームを夢見て始めた仕事は次第に家族を崩壊に追い込む。 ぶれずに本質を見抜き、人間を温かく見つめ続ける、大巨匠の本領が存分に詰まった傑作だ。
19/12/9(月)