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水先案内人のおすすめ

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白坂 由里

アートライター

木彫り熊の申し子 藤戸竹喜 アイヌであればこそ

北海道釧路市阿寒湖畔を拠点として熊の木彫り職人として活動した藤戸竹喜は、2018年に84歳で亡くなった不世出の木彫家だ。小さな彫刻でも、まず神に祈りを捧げてから彫り始めるという。まさかりで切った木の塊から大まかな形を彫り出し、さらに鑿(のみ)で全体を整え、彫刻刀で毛彫をして仕上げる。「じっと木を見ていると、なかから姿が出てくる」と語った通り、ひとつの木の塊から、デッサンも試作もなしに、イメージに沿って彫り出していき、生命感あふれる彫刻をつくり続けた。なかでも後ろ足で立つ、等身大の熊の木彫「全身を耳にして」は圧巻だ。 アイヌはさまざまな動物をカムイ、神の化神として崇め、そのなかでも熊は特別の存在だ。ほかにも、アイヌの先人たちの等身大の肖像、「フクロウ送り」の儀式からイメージした肖像、80歳を過ぎてから制作した、オオカミに育てられた少年の物語を木彫で表現した作品群など、さまざまな作品が東京で初公開されている。 木の命をいただいて、命ある彫刻につくり変える。遺作となった、後ろ足の爪や毛並みが彫られていない未完の熊が、昨年開催された北海道の画家「神田日勝 大地への筆触」展で展示されていた「馬(絶筆、未完)」とも重なった。

21/8/3(火)

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