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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

ヒロシマへの誓い ― サーロー節子とともに ―

原爆被災者の方のお話は、日本で生まれ育ち、親が戦時中子供だった辺りの私くらいの年齢までは耳にしていると思う。もしかしたらもっと下の世代まで日本人の多くが知っているのかもしれない。最近ではアニメーション『この世界の片隅に』なども制作され、さまざまな形で描かれ、伝えられ、残そうとしている世界の悲劇なのだ。けれど、辛いからと言って目を背けてしまったら、本当に伝えたいことが次の世代に受け継がれない。大事なことは、「人の命を奪うな」「人類を破滅の方へ向かわせるな」なのだ。 サーロー節子さんが感情を乗せて語る生々しい被爆体験は、まるで広島の中心地に自分がいるかのような錯覚さえ起こす臨場感あるもので、その後、自分の心に残る感情は「あの悲劇を繰り返したくない」というもの。大体の人は、他人事と思ってしまう「ひどい話だね」と同情で終わり、自分ごとにならないと行動には移らない生き物。 だからこそ、リアルな体験を臨場感ある語り口で伝え続けることは意味があり、その悲劇を生み出した核兵器を持った国が存在することに気づかせてくれる。 さらに東日本大震災の福島原発の事故での“差別”を描き、今のコロナ禍で感染した人への“差別”にもシンクロし、人間の差別意識にも焦点を当てているのがこのドキュメンタリーの新しい視点。いっぽう、核兵器など権力を持つことで人を制圧でき、平和な社会が築けると信じるレーガン元大統領の言葉は、今のミャンマークーデターを彷彿させる。 平和のためには武器は必要なのか? 武器を持った相手と安心して話せる人はどれだけいるのか? 私にはよく分からないし、このドキュメンタリーを観ることで、力で制圧するのではなく、“おかしいと思ったことは発言するのが美しい”と確信した。

21/3/26(金)

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