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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

東京不穏詩

日本在住のインド人監督アンシュル・チョウハンによる初長編作品です。と言ってもご存じでない方もいるかもしれませんが、この12月(19年)にバルト三国の一つであるエストニアの「タリン・ブラックナイト映画祭」に出品した長編第2作『KONTORA-コントラ』が日本初となるグランプリに輝いたので、早くも実力が認められた形です。 タイトルに「不穏詩」とあるようにきな臭いたたずまいがじわじわと押し寄せて来ます。東京のクラブで働きながら女優を目指す30歳のジュン(飯島珠奈)はある日、恋人が仕向けた男に金を奪われ、顔に深い傷をつけられてしまいます。恋人に裏切られ、女優になる夢も失ったジュンは5年ぶりに長野の実家に帰って来ます。そこで衝撃の事実を知り冷静さを失った彼女は粗暴な義父に「強姦されたと言いふらす」と脅し財産の半分を要求します。心が壊れてしまったジュンは旧友のユウキと再会し何とか居場所を見つけていくのですが……。 芸能界のセクハラや女に寄生するヒモ男、威張り散らすクラブの客など登場人物がみなリアルに見えるのは、監督が現実味を出すために実在の人物をイメージしながら脚本を書いているからでしょう。インド人監督の目線から逆照射される現代日本の姿に思わず考え込んでしまいます。 主演の飯島珠奈の演技に目を奪われます。妖艶な顔、血まみれの顔、そして鬱積していたものが解き放たれ、きらきらと輝く顔のどれもが生々しく、かつ愛おしく見えるかもしれません。 20歳になって初めて映画に出合ったという監督の初々しい感性がほとばしるような映像をじっくりと味わってください。

20/1/14(火)

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