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ホラー、ミステリー、トンデモ映画が大好物

春錵 かつら

映画ライタ―

ジョン・F・ドノヴァンの死と生

グザヴィエ・ドランの作品を観る度に「この引力はなんだろう」って思う。 2009年、少年と母親の関係を瑞々しく描いた『マイ・マザー』での鮮烈なデビュー当時、監督・脚本・出演も務めたドランはまだ19歳だった。初めて彼の作品を観た時に感じた溢れる才能に、「天才とはこういうものか」と打ちのめされた時のことを、私は鮮明に覚えている。私の中にいる“少女”は、紛れもなく彼の才能に恋をし、嫉妬と憧憬と失意を同時に感じさせる唯一無二の映画監督となった。 そんなドランの新作は、子役の少年に宛てられた手紙を通して語られるアメリカの人気俳優、ジョン・F・ドノヴァンの死と生についての物語。ドラン自身の幼いころのエピソードに着想を得た初の英語作品で、キャストも豪華な顔ぶれが並ぶ。 一人の青年の目を通したスターの物語が主軸ではあるものの、今作でも衝突し赦し合う母と息子が描かれる。この「母子の愛憎」はドラン作品にとっては避けて通れないもののようだ。彼の作品に登場する母親は、いつだって厄介で鬱陶しく、それでいて愛情深く切り捨てがたい。 さて、本作のタイトルは『ジョン・F・ドノヴァンの生と死』ではなく、原題通り『~死と生』、“あるスターの死”から始まる物語だ。“スターの死”を思うたび、人々は生前のスターを語り、スターは人々の心で再び生きなおす。そしてその“死”を通して、自身の“生”を見いだす者もいるのだ。

20/3/11(水)

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