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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

ヒトラーに盗られたうさぎ

ヒトラーの恐怖政治を描いた映画は多々あれど、強制収容所の中ではなく、逃げ続けながら子供の才能を伸ばしていく映画は今まで観たことがありませんでした。歴史に残る悲劇を描くのではなく、困難な状況でも“人の才能を伸ばす”ことができるという希望的視点から、本国ドイツで大ヒットを記録したのではないでしょうか? 世界的な絵本作家ジュディス・カーは、社会的に過酷な幼少期をどう過ごしたのか? 彼女の目には世界はどう映ったのか? この物語の面白いところは、幼い少女の不安な心を両親がどう受け止め、どう対応したのかが、日常の些細な出来事の中で、態度や言葉として綴られているのです。“自己肯定”とは周囲の大人たちの対応によって育まれ、やがてそれが才能となって開花することを証明した映画でした。 『名もなきアフリカの地で』でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したカロリーヌ・リンク監督らしいそれぞれの人柄を浮き上がらせる演出は細やかであり、少女アンナを演じた新人のリーヴァ・クリマロフスキの眼力に引き寄せられてしまうのです。 目から鱗の両親の言葉や対応に、描く絵が変わっていくことで心が変化していくという少女の成長物語は、人生哲学書とも言えます。お見事。

20/11/25(水)

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