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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

コロンバス

アリ・マッグロー、リチャード・ベンジャミン主演、ラリー・ピアース監督『さよならコロンバス』(1969)で初めてコロンバスという都市名を知った。そして本作『コロンバス』で“ココナダ”という奇妙な名前を持つ監督の存在を知った。 ロベール・ブレッソン(『Hands of Bresson』)やアルフレッド・ヒッチコック(『Eyes of Hitchcock』)のビデオ・ドキュメンタリーを撮った韓国系アメリカ人監督、と資料にはある。彼は大の小津安二郎ファンでもあり、『Ozu: Passageways』というドキュメンタリーも作っている(YouTubeでその断片を視聴できる)。小津作品を支えた脚本家の野田高悟(ノダ コウゴ)にちなんでコゴナダ (よく分からない)と名乗るようになった、という。 舞台はモダニズム建築の宝庫として知られるインディアナ州コロンバス。高名な建築学者の父が講演ツアー中に倒れたためにコロンバスを訪れた韓国系アメリカ人のジン(ジョン・チョー)と、街にあふれるモダニズム建築に詳しい図書館勤務のケイシー(ヘイリー・ルー・リチャードソン)とが出会う。父との確執を抱えるジンと薬物依存症の母のためにコロンバスから離れられないケイシーは惹かれ合っていく、という物語。 建築についての知識がないのでモダニズム建築の歴史的意義は分からないのだが、エーロ・サーリネンによるミラー邸をはじめリチャード・マイヤー、ジェームス・ポルシェックなど著名建築家の代表作が建ち並ぶ都市と建築物を、主人公にするというアプローチがユニークだ。 シンプルだが奥行きある建築物とふたりの心象風景を重ね合わせた映像から、小津賛歌が聴こえてくるような映画、といえばいいだろうか。 主人公のジンを演じるのは『スター・トレック』『search/サーチ』のジョン・チョー。ケイシー役には『スプリット』『スウィート17モンスター』のヘイリー・ルー・リチャードソン。 サンダンスをはじめ23の映画祭にノミネートされ8冠を獲得。クロトゥルーディス賞では、『君の名前で僕を呼んで』を抑えて撮影賞を受賞している映像が見事だ。

20/3/10(火)

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