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水先案内人のおすすめ

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クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

つつんで、ひらいて

1980年代後半から90年代にかけて、話題になる文芸書、人文書の大半に、「装幀・菊地信義」とクレジットされていた。 イラストはほとんど使わず、文字と色、そして紙の質感だけで表現されるそのデザインには、ひと目で「ああ、菊地信義だ」と分かる、何かがあった。 その「何か」の片鱗がわかる映画だ。 菊地信義の装幀と同じように、声高ではなく、静かで控え目なようでいて、強く訴えてくるドキュメンタリーで、この映画そのものが、菊地信義的である。 一般の「読者」は、紙選び、インクの調合、印刷、製本といった、モノとしての本がどうできるかの工程に立ち会うことはないだろうから、本好きな人は、ぜひ見てほしい。 電子書籍は「読む」だけならば便利だ。しかし、本はそこに印刷されている文字が伝える情報だけで成り立つものではなく、インクの色や紙の質も含めた「装幀」によって伝わる要素もあるのだと、改めて思う。

19/12/11(水)

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