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ドキュメンタリーの面白さを知ると映画の見方が変わる
村山 匡一郎
映画評論家、大学講師
ボストン市庁舎
21/11/12(金)
ル・シネマ
今年で91歳になるフレデリック・ワイズマンの新作ドキュメンタリー。マサチューセッツ州の古都ボストンは、移民が多く、アメリカ社会の多様性を象徴する都市であり、監督自身の出身地でもある。そんなボストン市の行政サービスを、市民がいかに幸せな生活を送れるかという政治の核心から市職員と市民の対話を中心に描き出す。その行政のあり方は、当時のトランプ政権の政治姿勢とは真逆の多様性の尊重に重きをおいている。市長、警察、消防、教育など、あらゆる行政活動をカバーしているが、これまでのワイズマン作品のなかでは人々の言葉が占める比重が大きいといえる。それでもボストン市の行政のあり方が次々と展開されて飽きることはない。日本の地方行政にかかわる人々には必見の映画である。
21/11/11(木)