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水先案内人のおすすめ

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ギャラリーなどの小さいけれども豊かな展覧会・イベントを紹介します

白坂 由里

アートライター

アイヌの美しき手仕事

数年前、姫田忠義の記録映画を見て、色数の少ないアイヌの衣装は自然の中で映えるように思った。この展覧会は、博物館の展示ともまた違い、造形から目に止まるように展示されている。 日本民藝館の創設者・柳宗悦は早くからアイヌ民族の工芸品を収集し、1941年に日本民藝館で「アイヌ文化工藝展」を開催している。その展示を担った染織家の芹沢銈介もアイヌ工藝を収集していた。今回は、柳(日本民藝館所蔵)と芹沢(静岡市立芹沢銈介美術館所蔵)のアイヌ・コレクションを、当時の展示壁面を一部再現しつつ紹介。古今東西の美を発掘した柳と芹沢の審美眼も感じられる。 渦巻き型やうろこ型や棘型などの文様は、決してシンメトリーではなく、1点1点異なる。光を描いたようにも見えた。オヒョウ(樺太ではイラクサ)など樹木や植物から繊維をとって機織で織り出した衣装は厚地に太い糸で切伏(今でいうアップリケ)や刺繍を施しているため、線の凹凸に味わいがある。寒冷地で綿花は育てられないため、木綿や藍染は、明治期に本州との交易で入るようになったものだ。また、赤色は高貴な色だという(縄文文化と同じだなあ)。ほかに、イタ(盆)や儀礼に用いられるイクスパイといった木彫工芸品、花ござ、交易で入手したガラス玉をつなぎ合わせた首飾りなどもある。 この夏、北海道白老町に国立アイヌ民族博物館を含む民族共生象徴空間「ウポポイ」が開園し、アイヌ文化への関心がにわかに高まっているのか、雨にもかかわらず日本民藝館はほどよい賑わいを見せていた。 また、現代のアイヌを知るのには、池田宏の写真集『AINU』やマレウレウの音楽などもおすすめだ。公開中の映画『アイヌモシリ』も見てみたい。

20/10/31(土)

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