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水先案内人のおすすめ

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映画史・映画芸術の視点で新作・上映特集・映画展をご紹介

岡田 秀則

1968年生まれ、国立映画アーカイブ主任研究員

没後50年 成瀬巳喜男の世界

学生のころ、『浮雲』の怒涛のような展開を見せる男と女の腐れ縁に圧倒され、『乱れ雲』終盤の長い踏切待ちのシーンを貫く男女の感情の高まりに圧倒され、『放浪記』では高峰秀子の異常なまでの役作りの深みに圧倒され、『石中先生行状記』のなんともあっけらかんとした愛情表現に圧倒され、数年後に東京国際映画祭で初めて観ることのできた『旅役者』では、見事なエンディングに圧倒された。 だが、こんなに圧倒されたのに、成瀬巳喜男の映画のエッセンスを言葉で表現することは本当に難しい。饒舌な台詞を排し、登場人物たちの視線のやりとりや小さな身ぶりの積み重ねによって情感あふれるドラマを織り上げてゆく、とは成瀬映画を示すのにふさわしい言い回しとは思うが、それでもまだ本質を掴んだとは言い切れそうもない。 現場の残業も少なく、俳優への注文も激しくなかったという、黒澤や小津のようなエピソードに乏しい成瀬。だのに当の映画は、観ると今でも圧倒されてしまう。何から観てもいいに決まっているが、初めての方には一応1950年代の充実期の作品がお勧め。そして、すでに何本か代表作をご覧の方には、ラストで呆然とさせられる仇討ちの物語『お国と五平』をお勧めしておきましょう。

19/11/3(日)

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