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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

ラスト・クリスマス

こんなラブストーリーが観たかった!と満足しきりでありました。 イギリスの人気グループだったワム!の切ない名曲に乗せて、ジョージ・マイケルの歌に想いを乗せて、ロマンチックなのに社会的メッセージも込めた極上エンタテインメントという言葉が似合う物語。ロンドンのクリスマスが舞台というのも、世界中で愛されるクリスマスソング『ラスト・クリスマス』への愛と、その歌を世に送り出したジョージ・マイケルが2016年のクリスマスにこの世を去ったことが理由と思われます。 オスカー女優であり、アカデミー賞脚色賞の受賞歴もあるエマ・トンプソンもこの名曲のファンであり、脚本を担当したことから彼女特有のファンタジックで、大衆好みの、それでいて、ジョージ・マイケルの心を映し出すような物語に仕上がっているのが他の音楽映画と一線を画すところ。 主人公ケイトを演じるエミリア・クラークは『世界一キライなあなたに』のようなコメディエンヌぶりでたまらなく愛おしく、共演のヘンリー・ゴールディング(『クレイジー・リッチ!』)は、包み込んでくれるような優しい眼差しなのに、どこか手に届かないような存在で、物語をじんわりミステリアスに染めていきます。 このキャスティングも絶妙で、クリスマスショップのオーナーには、ミシェル・ヨーなど、多国籍の俳優を散りばめ、さらにケイトの家族が移民であること、同性愛についても描かれていることなどを見ると、ジョージ・マイケルの両親が移民であることや、彼がゲイであったことから、ボーダレスな愛が根底のテーマになっていることが分かるんですよ! しかも途中、ホームレスのシェルターでのボランティア活動が出てくるところなんか、ジョージ・マイケル自身の経験談なのだから、ただのロマンティックコメディじゃない! けれども、それらの社会的メッセージを重く描かず、あくまでもひとりの女の子の恋と心の成長を甘酸っぱく描きながら、エッセンスとして散りばめたところが絶妙。随所に使われる選曲も素晴らしい! 目にも耳にも心にも潤いを与えてくれる傑作でありましたっ!

19/12/2(月)

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