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水先案内人のおすすめ

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歌舞伎とか文楽とか…伝統芸能ってカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

国立劇場 令和2年12月歌舞伎公演

今月の国立劇場は、第一部、第二部ともに河竹黙阿弥の世話物だ。歌舞伎座でもよくかかる世話物の古典。黙阿弥ものといえば七五調の台詞で知られるが、この2作品は特に有名な台詞が多い。 第一部の『三人吉三巴白浪』では、お嬢吉三の「月もおぼろに白魚の」、第二部『天衣紛上野初花』では河内山宗俊の「悪に強きは善にもと」などが有名だが、主役だけではなく脇の役や並びの腰元たちに至るまで、スキッと心地よい調子の台詞が多い。ちなみに余談だが、「世話物=せわもの」という用語のイントネーションにはちょっとしたポイントがある。「瀬戸物」のように「せ」「わもの」と平に上げるのではなく、「せ」「わ」と上がり、「もの」と下がる。 『三人吉三』は江戸の隅っこに息づくやんちゃな少年たちが主人公。『天衣紛上野初花』の主人公河内山宗俊は江戸城に出入りするお数寄屋坊主だ。最後の最後で大逆転する河内山だが、このお数寄屋坊主という職業にヒントがある。 お数寄屋坊主とは、将軍や重役、登城した大名たちを世話し、調度を整えたりする役目。河内山は頭を丸めてはいるが、宗教的な意味での僧ではない。だが職業柄、一介の大名よりも将軍に近いポジションに出入りを許されていた。そのため自分の強請り騙りがばれても、「この河内山は直参だぜ。たかが国主であろうが大名風情に裁許をうけるいわれはねえ」と開き直れるのだ。おそらく江戸の庶民はここで快哉を叫び、溜飲を下げただろう。 前半の「上州屋質見世の場」では、人助けのために金をせびる悪知恵の働く江戸っ子に、後半は高僧に化けて松江家に堂々と入り殿様を脅すアンチヒーローに。その変わり目にも注目しながら、じっくりとオペラのような台詞の面白さ、美しさを堪能しよう。松本白鸚が河内山をつとめる。 第一部の『三人吉三』はお嬢に中村時蔵、和尚に中村芝翫、お坊に尾上松緑。 第二部は他に、踊りが二本。中村福助が出演する『鶴亀』、市川染五郎の『雪の石橋』。

20/11/29(日)

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