アニー・エルノーの自伝的小説の映画化。『若い女』のレテシィア・ドッシュがヒロインを、不倫関係に陥る年下の男をセルゲイ・ポルーニンが演じる。 原作では東欧出身の外交関係の仕事をする男なのだが、映画ではロシア出身の警備の仕事をする男に変えられている。男を俗物から美男でブルーカラーの男に変更することで、よりメッセージが現代的でドラマチックなものになった。原作自体、仏の文壇でも女性に絶賛された反面、多くの男性の拒否反応を生んだが、ベイルート出身の女性監督ダニエル・アービットの大胆な演出が光っている。赤裸々な性描写は「性愛の現実を描いた」小説に忠実。ただ切実で、私たちの経験の中に入り込み、忘れがたい徴を残す。

21/6/23(水)