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水先案内人のおすすめ

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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

わたしは金正男を殺してない

政敵を毒殺して自身の地位を強固なものにするというお話は古今東西を問わず繰り返し語られ、映画でもしばしば描かれてきました。本作もその一つであることは間違いありませんが、他の事例と際立った違いが二つあります。一つは実行犯とされた若い女性2人が自身の行為をいたずら動画の撮影だと信じていたこと。もう一つは数多くの監視カメラの映像により事件の黒幕に限りなく近づいた優れたドキュメンタリーだということです。 ご存知のように本作は2017年にマレーシアのクアラルンプール国際空港で実行された、北朝鮮の最高指導者・金正恩の実兄である金正男暗殺事件の闇と真実に迫ったドキュメンタリー。観光客が行き交う空港内で、金正男が神経猛毒剤の「VX」を顔に塗られ殺されました。実行犯はベトナム人のドアンとインドネシア人のシティというごく普通の若い女性。なぜ2人は事件に関わったのか。事件を追う映像はやがて、より良い人生を夢見る貧しい彼女たちにつけ込む北朝鮮工作員たちの冷徹で非情な姿を明らかにしていきます。 中でも圧巻は事件後に空港内のロビーで笑い合う工作員の姿と、釈放されたシティが「(自分が使い捨てにされたのは)お前の人生には何の価値もないと工作員に思われたから」と振り返る場面。後味の悪さが残るからこそ、真実に迫るステップにしたい作品です。

20/10/7(水)

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