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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

【特別展】 桜 さくら SAKURA 2020 ―美術館でお花見!―

山種美術館所蔵の桜の花を描いた作品による、毎年恒例の展覧会。出品作品の多くはこれまでに何度か見たことのあるものが多いのだが、コロナウィルス禍中に改めて向き合うと、今までにはない受け止め方をしている自分に気づく。芸術作品の本質は普遍であり、時代や状況によって変わることはないのだろうが、作品に触れる人間は確実にある時代、ある状況下に生きている。それが、作品の受け止め方に影響するものだということを、今更ながらに感得した次第。 平安の昔から和歌に謳われ、屏風や浮世絵に描かれてきた桜。人々は桜を単に「美しい」花としてだけではなく、その佇まいに死生観を反映させ、いずれは死ぬ運命にある「生きる者」の心情を託してきた。そうした伝統を受け継ぐ近代以降の画家たちが、己にとっての桜と真摯に向き合う姿勢がひしひしと伝わってくる(というか、筆者がようやく今そうした姿勢の奥深さに思い至ったというか......)。 作風の違いは、個々の画家が桜を、ひいては命のありようをどう捉えているかの表れであり、様々な語り口で見る人に語りかけてくる。特に夜桜を主題とする作品群が魅力的。朧月夜の桜もあれば、おそらくボンボリだろうか、人工照明に浮かび上がる桜もある。梶井基次郎ではないが、現実と彼岸が交錯する幻想的な世界が広がっていく......。 国公立の美術館・博物館が臨時休館中だからこそ、見て欲しい展覧会である(今後のウィルス感染状況によっては休館になることも起こりうるので、事前にHPでチェックしていただきたい)。

20/4/2(木)

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