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映画史・映画芸術の視点で新作・上映特集・映画展をご紹介

岡田 秀則

1968年生まれ、国立映画アーカイブ主任研究員

企画展『俳優 緒形拳とその時代ー戦後大衆文化史の軌跡ー』

もう没後12年なのかと驚いてしまう。『復讐するは我にあり』の、悪魔的な残忍さと嘘八百の弁舌を兼ね備えた、人間の理解を超えるような逃亡殺人犯。『魚影の群れ』の、強固なプライドを背負って巨大なマグロとの死闘を続ける無骨な漁師。筆者は映画でしか知らないが、緒形拳の演技には、この人にしかない迫力と人間味がいつも備わっていた。 その緒形の俳優人生を追った展覧会が面白い。新国劇での修業時代、テレビから映画界への転身と続くが、緒形は舞台上やキャメラの前で表現しただけでなく、いわば書家でもあるから、何か感じたら字でも表現したし絵でも表現した。所属事務所から提供された台本だけでなく、映画パンフやポスターにも全部サインが入っているのが微笑ましい。驚いたのは、ロベール・ドアノーによる「パリの緒形拳」の写真だ。外国人は撮らないというドアノーが、なぜか彼には関心を持ったのだという。 出口近くに、『楢山節考』のカンヌ国際映画祭パルム・ドールのトロフィが出品されているのも貴重だ。日本でこのトロフィを見る機会は稀なので、この機会に是非ご覧いただきたい。 この企画自体には不意を衝かれたが、行ってみれば、緒形拳の体温が伝わってくるような味わいのある展覧会だった。芸談らしき言葉はなく、説教くさい話はあまりしない人なのだろう。喪失感がまた募った。

20/11/13(金)

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