「住所不定無職低収入」や「香港ブルース」などの歌は勿論、ステージでの佇まいも含めて、細野晴臣氏の世界に接すると、とても心地良い気分になってくる。コロナ禍以前、2019年、音楽活動50周年を迎え、初のアメリカでのソロコンサートを記録した、この映画は“マスクのない時代を偲んで”作られた貴重なドキュメンタリーだ。場内は満員、観客は当然ノーマスク。冒頭で、細野氏は「突然現れたウィルス このパンデミックは 世界的なオペラのように感じる 演出家は誰なんだろう 自由が制限されて 全体主義に進んでいるのが怖い ウィルスも怖いけど 人間も怖いね」と語るが、同感です。不要不急だからこその音楽の大切さ。ニューヨークでも、ロサンゼルスでも、会場の前に並んでいる観客たちは細野氏の音楽へ賞賛を惜しまず、その流れで、ライブは、暖かさに包まれている。

21/10/31(日)