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水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

音楽は生活の一部、映画もドキュメンタリー中心に結構観ています

佐々木 俊尚

1961年生まれ フリージャーナリスト

ファナティック ハリウッドの狂愛者

『サタデー・ナイト・フィーバー』や『パルプ・フィクション』で知られる大物俳優ジョン・トラボルタが、いったい60歳代なかばにもなってなんでこんな役を演じてるんだ!とただひたすら驚かされる作品。昨年の話題作『ジョーカー』とスティーブン・キング原作の『ミザリー』を足して二で割った、というと身も蓋もなさすぎるかもしれないが、そういう映画だ。ちなみに本作は、ゴールデンラズベリー賞(ひどい作品に贈られることで知られる)の2019年度「最低主演男優賞」を受賞している。 トラボルタ演じる主人公は、映画ファンがこうじて狂気のストーカーになってしまう人物なのだが、観ていて「怖い」とか「笑える」と言うよりも、「こんなキャラクターを映画に出しちゃっていいのか」と心配してしまう。この原稿に明快に書くのも難しいが、“描いちゃいけないある種の人物を描いちゃってる”感がある。しかし、そのヤバさが逆に映画としての破天荒な面白さを醸し出しているのも事実で、触っちゃいけない錆びたナイフをうっかり手で握ってしまい、「もう少し強く握ったら血が出て挙げ句に破傷風になるかも」という不安を感じながら、でもドキドキしながら握ってるような作品である。 『ジョーカー』のホアキン・フェニックスもそうだったが、名優にとってはヤバい人物を演じるというのは麻薬的な魅力があるのかもしれない。『ジョーカー』と本作で拓かれたその方向性は、今後ハリウッドでも増えてくるかもしれない。

20/8/31(月)

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