本作の監督、フェリックス・ビスカレットは、スペインが世界に誇る巨匠、カルロス・サウラ監督のこれまでのキャリアと4人の女性との間に7人の子をもうけている彼の実生活に迫ろうとする。ところがサウラは口をつぐむとはいわないが、作品に関してはほとんど語らない。 本人は「自分は常に先のことにしか興味がなく、過去は振り返らない」と断言。同じく映画畑にいるサウラの子どもたちによって、ようやく話はいくつか引き出される。 結果として作品は成立している。だが、果たして、監督は満足な取材ができたのか？　偏屈で一筋縄ではいかない巨匠の全貌に、喰らいつこうとしたがとらえられたか確信をもてない。ドキュメンタリストとしてはできれば表に出したくない監督の苦悩がそのまま刻まれている稀有な作品といっていい。

20/11/28(土)