Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

若尾文子映画祭

『女は二度生まれる』(3/20、3/21、3/25、3/29、4/2) 角川シネマ有楽町 「若尾文子映画祭」(2/28〜4/2)で上映 川島雄三監督が松竹を皮切りに、日活、東宝・東京映画から大映へと移籍した最初の作品(『雁の寺』『しとやかな獣』の3本しか監督しなかった)が1961年の『女は二度生まれる』。若尾文子の起用に反対する重役たちに川島監督が、「若尾君を女にして見せます」とカマしたエピソードがよく知られている傑作だ。 そのころの大映は市川雷蔵、勝新太郎、田宮二郎、山本富士子、京マチ子、若尾文子らのスターが妍を競っていた黄金時代。主演の若尾はこの年だけで11本もの映画に主演・出演している。 だから『女は二度生まれる』は、引っ張りだこの売れっ子監督と映画会社を背負っていた女優の話題の初コンビ作だったのだ。 三味線も踊りもできない、客と寝ることで生計を立てている不見転(みずてん)芸者小えん(若尾文子)が、寿司職人(フランキー堺)、会社の社長(山茶花究)、建築士(山村總)などタイプの違う男たちと浮気を重ねていく。やがて芸者置屋が摘発され、芸者をやめてバーのホステスになった彼女は建築士のお妾さんに転じる。 さまざまな男と出会い、それぞれにちがう顔を見せる奔放で可愛いらしい小えんという女の魅力を、若尾があどけなく、妖艶に演じているのが最大の見どころ。洋装・和装、出るたびに変わる衣装の見事な着こなしもお楽しみだ。 戦災孤児の小えん、彼女が片思いする大学生藤巻潤の父親も戦死、彼女が毎日のように参拝している靖国神社という設定が、戦争と死の匂いを運んでくる。 小えんが全てを捨てて歩みだすラスト・シーンからは、「さよならだけが人生だ」という川島監督の声が聞こえてくるようだ。

20/3/16(月)

アプリで読む