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水先案内人のおすすめ

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テレビプロデューサー テレビは見ずに演劇、映画、コンサートばかり足を運んでいる

波多野 健

1954年生まれ プロデューサー(イースト・エンタテインメント)

ピータールー マンチェスターの悲劇

『秘密と嘘』で知られるイギリスのマイク・リーという監督にはいつも感心している。『秘密と嘘』では現場での即興的なアプローチで、結末を役者たちは知らされていなかったという『24』のような作り方が緊張感を高めていたが、今回は彼の生まれ故郷であるマンチェスターで起きた事件を、ほとんど史実通りに描いている。その徹底ぶりには、ドラマとしての盛り上がりなど必要ない、と彼が語っているようにも見える。ほとんどがクライマックスの悲劇に淡々と向かっている。内容としては今からちょうど200年前に起こった、民衆たちによる民主主義を求めるデモや集会を権力が弾圧した事件で、それは200年経った今も、香港や中国などで変わらずに起こっていることに戦慄を覚える。 一番、今回の彼の作品で印象に残ったのは、その映像の美しさ。ほとんどのカットが、中世に描かれた「名画」のような色合いなのだ。見ながら「これは一体どうやって撮っているのだろうか?」と不思議だった。ゴッホの晩年を描いた『ゴッホ~最期の手紙~』のように、本当の画家たちが描いた何百枚もの絵を繋ぎ合わせているわけではない。普通の実写なのだが、とにかくその色味が半端ではない。前作『ターナー、光に愛を求めて』で画家ターナーの生涯を描いたから、というだけではないと思う。そこには、彼のこの映画にかけるこだわり、「叙事詩を絵画のように映像化したい」という意味合いがこもっているのだと思う。この映像を楽しむためだけでも、お薦めです。

19/8/5(月)

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