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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み
伊藤 さとり
俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ
ラストナイト・イン・ソーホー
21/12/10(金)
TOHOシネマズ 日比谷
エドガー・ライト監督がまた聴覚と視覚を駆使して脳を刺激してくれる映画を作ってくれた。しかも田舎と都会、現実と幻覚、現在と過去を繋いで魅せる、思考がショートしそうな幻想的な映像美。 60年代のロンドンソーホー地区が怪しげな魅力を放ち、主人公を誘惑するように過去へと誘っていく画は、キューブリックの『アイズ ワイド シャット』のようにエロティックで見惚れてしまう。 冒頭の展開や設定から、主人公は幻覚を見たり幻聴を聞く統合失調症なのか?と思わせる点は、サイコサスペンスなのかホラーなのか、観客を惑わせる語り口として秀逸。 更にホラークイーンのように登場するNetflixドラマ『クイーンズ・ギャンビット』で話題となったアニャ・テイラー=ジョイの妖艶さと、『オールド』のトーマシン・マッケンジーの対比も絶妙で魅せられてしまう。 60年代の音楽や衣装がお化け屋敷的役割を果たす面白さと、その街に歴史ありと気付かされる建物や路地の存在感にゾクゾクする魔術のような映画だった。
21/12/2(木)