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水先案内人のおすすめ

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文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

ディリリとパリの時間旅行

ミシェル・オスロは『キリクと魔女』のユニークなアニメーション表現で瞠目すべき才能をみせつけた。そのミシェル・オスロの期待の新作はベル・エポックのパリを舞台に、ニューカレドニアからやってきた少女ディリリと友人の少年オレルが、連続少女誘拐事件の真相を解明するという痛快な冒険譚である。 モネ、ロートレックらの印象派の画家、コレット、ジイド、ワイルドなどの作家、ドビュッシー、サティといった音楽家、世紀末、今世紀初頭のパリで活躍した数多の芸術家たちが実名で登場し、束の間の点景として現れては消えていく。その淡彩のスケッチのような描写がすばらしい。 ヒロインのディリリはフランス人とニューカレドニア人との混血であり、映画はノスタルジックなトーンを一貫させながらも、男性支配団というおぞましい少女誘拐グループが象徴するように、階級によって分断された社会、人種差別、女性差別、フェミニズムといった多様でアクチュアルな現代的テーマを物語のなかに通奏低音としてしのばせる。とりわけアンリ・ルソーを霊感源にしたと思われるプリミティブな色彩感覚には陶然とさせられた。

19/8/20(火)

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