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夏目 深雪
著述・編集業
さくら
20/11/13(金)
新宿ピカデリー
西加奈子のベストセラー同名小説を矢崎仁司が映画化。同性愛、近親相姦的な愛など矢崎らしいテーマもあるのだが、子供たちに対し性的にあけすけな母親と父親との関係や、長男の事故の行きつく先など、サバサバとしていながらも、同時に人生の影の部分をきちんと盛り込む骨太なところは西の原作が持つものだろう。 母親を演じた寺島しのぶ、妹を演じた小松菜奈、長男の恋人を演じた水谷果穂など、女優陣がとにかく素晴らしい。男たちは苦しみ、それでも家族を守ろうとし、それにより傷を負った女性たちもその放埓さを失わずに生き長らえることができる。女性作家のしたたかで強い視線が、女性を美しく撮る矢崎との個性と相俟って忘れ難い作品となった。
20/11/9(月)