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水先案内人のおすすめ

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一瞬がすべてを救う映画、だれも断罪しない映画を信じています

相田 冬二

ライター、ノベライザー

火口のふたり

かつての恋人たちが、再会する。 女はもうすぐ結婚式だ。だが、それまでの数日間、期間限定の約束で、一緒に食べたり、一緒に寝たり、とにかく“とき”を共に過ごす。 自分たちの過去はよみがえるし、そこに向き合うこともあるが、その時間は決して過去の再現ではない。お互い、一緒にはいられなかった歳月があるからこそ、確かめ合える“なにか”がある。たぶん、その“なにか”がなければ、再会には意味がない。 成長するというのは、喪うことでもある。歳をとるというのは、置き去りにすることでもある。だが、生きていれば、だれもが“なにか”を喪い、“なにか”を置き去りにしてしまう。それは特別なことではない。人間すべてが経験する、避けることのできない真実だ。 こんなふうに書くと、暗く湿っぽいものを想像するかもしれないが、この映画はカラッとしていて、晴天の下の洗濯物のようにさわやかだ。 別れた恋人に逢うのも、お互いにとって決して悪いことではないかもしれない。 心地よく後ろ髪がひかれる。そんな1本である。

19/8/19(月)

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