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ホラー、ミステリー、トンデモ映画が大好物

春錵 かつら

映画ライタ―

アンテベラム

悪夢から目覚めたのに現実がまだ悪夢の続きだったと体感するのは観客の方だ。 南部のプランテーションで働かされる奴隷・エデンと、都会でキャリアを成功させた社会学者ヴェロニカ。本作はこの二つの世界で展開するサスペンス・スリラーだ。 「アンテベラム」と聞いて日本ではピンと来ない人が殆んどだが、本作が製作されたアメリカでは奴隷制を連想させ、南北戦争以前の1781年~1860年のことを指す。タイトルから一貫して本作が放つメッセージは、近年SNSで世界的に広まった「#Black Lives Matter」。これまでもずっと続けられて来た人種差別抗議であり、さらに本作は性、階級の問題にも言及している。見覚えのある差別の姿を通して描かれる“ねじれ”が本作の醍醐味であり、“迫害”という行為の気持ち悪さをうまく助長している。 人種の問題も、性の問題も、いつだって迫害する側は「昔より改善された」と言うが、迫害される側は「まだまだ変わっていない」と言う。たとえ問題が同一のものだったとしても、する側とされる側の問題の大きさは全く異なる。 冒頭に記されたウィリアム・フォークナーの「過去は決して死なない、過ぎ去りさえしないのだ」という回顧にも似た響きを持つ言葉が、終幕には恐怖の響きへと変貌しているのを、観客はきっと実感するはずだ。

21/11/2(火)

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