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水先案内人のおすすめ

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洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります

堀 晃和

ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。

許された子どもたち

映画は、作り手の思いを観る者に強要しない。内容をどう解釈するかは、基本的に観客の自由だと思っている。実際に起きた少年事件に着想を得た本作も、問題を提起はしているが、答えまでは用意していない。加害者に焦点を当てた物語が、罪との向き合い方、そして社会正義とは何かを強く問いかけてくる。 中学1年の市川絆星(きら)は仲間とともに、いじめていた同級生の倉持樹(いつき)を河川敷に呼び出し、手製のボウガンで撃って殺してしまう。警察の調べに一度は事実を認めたが、無実を信じる母親の強い説得もあって少年審判では否認に転じて不処分に。しかし、市川家は世間から激しい批判を浴び、ネットで実名や住所をさらされてしまう。 犯した罪に困惑する少年、我が子を盲信する母親、刑事責任を問えなかった遺族の苛立ち、加害者家族に向けられた世間の過剰な正義感……。カメラは、登場人物の様々な表情を丁寧に追い、胸の奥にある複雑な感情を描写していく。 心を通わせようとする少女とのキスシーン、走る少年たちをとらえた俯瞰のショットも印象に残る。重いテーマだが、どこか荒んだ気持ちになれないのは、そんな青春のテイストも込めた監督の演出があるからだろう。

20/6/1(月)

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