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水先案内人のおすすめ

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五十川 晶子

フリー編集者、ライター

国立劇場 令和3年7月歌舞伎鑑賞教室『義経千本桜』河連法眼館の場

『義経千本桜』という長い長いお芝居のクライマックスに当たるのがこの『河連法眼館の場』。原作の人形浄瑠璃の全五段のうち四段目の切りにあたることから通称「四の切」(しのきり)と呼ばれる。 兄源頼朝に疎まれた源義経一行は、都落ちをし、吉野山の衆徒頭である河連法眼の館に匿われている。義経から初音の鼓を託された愛妾静御前とともに旅をしてきた家臣の佐藤忠信。ところが吉野山で義経に再会した忠信本人は怪訝な顔をし、「自分は病に臥せっていた」といいことごとく話が食い違う。静御前に付き従っていたのは、実は初音の鼓にされた父母を慕って、その子である狐が、忠信に姿かたちを変えて静御前に付き従い吉野山までやってきたのだった。 狐忠信の出、早替り、狐詞といわれる独特のせりふ回しや、狐手と言われる工夫など、狐らしさが随所に表現されている。また装置を大胆に使ったけれん味も楽しみどころ。 佐藤忠信と狐忠信の二役をつとめるのは中村又五郎さん。今回三度目となる。 「本物の忠信の方が難しさを感じますね。義経の家来ですが、役者の大きさというものが必要で、若造に見えてはいけません。また狐になってからは”中性でやれ”と言われます。そして幼いという意味での子狐ではなく、初音の鼓になった親の子供の狐ということが大事ですね」 静御前をつとめる市川高麗蔵さんも静という役の性根を大事にしたいと語る。 「前回勤めたときの台本を見直すと、先輩方からいただいた言葉をぎっしり書き込んでありました。静は赤姫という典型的なお姫様の扮装ですが、お嬢様ではない、白拍子であるということを心にとめておかなくてはいけません。『鳥居前』『吉野山』にも出てきますが、いずれも守られる立場。でもこの四の切では狐忠信を詮議するなど攻める方の役。女方としては珍しいタイプですが、勤めていてとても面白く、今回も丁寧に勤めたいと思います」 今月は歌舞伎鑑賞教室の公演となる。この『河連法眼館』はこの鑑賞教室の演目としても上演頻度ベスト1。時代物の華やかさ、親子の情愛、義経と静御前という人気のカップルなどなど、楽しめる要素にあふれている一幕だ。

21/6/26(土)

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