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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

盲目のメロディ~インド式殺人狂騒曲~

インド映画は変わってきたとよく言われます。お約束の歌や踊りが皆無だったり、3時間近い長い作品が徐々に減り逆に2時間程度の短い作品が増えています。でもここまで変わった作品には初めて出合いました。 たとえば主人公のピアニストが殺人事件を目撃したのに、死体も犯人も見えないふりをして自身の危機を脱するというスリリングな導入部分が斬新でお洒落です。またその先は二転三転し、最後まで展開を予測することなんて不可能なほど先読みを外されていくことでしょう。登場人物の何でもありの裏切りと騙し合いは思わず笑ってしまうほどで、1本の作品でブラックコメディからクライムサスペンスまで堪能した気分になること請け合いです。 こんなスピーディな展開に一癖も二癖もある俳優陣がうまく合わせていく演技力にも驚かされます。根っからの極悪人と思わせておいてその後の展開によっては可哀想な人、あるいは優しい一面もあったんだと思い直した途端、見事に足を救われる。誰に感情移入していいか混乱します。その見極めのセンスが問われる作品と言ってもいい作品かもしれません。 監督は「インドのコーエン兄弟」の声もかかるシュリラーム・ラガバン。インド映画は歌と踊りだけでも十分に楽しませてくれるのに、こんな「宝物」まで手に入れたら世界無敵の映画大国になってしまいそう。いやもうなっていますね。

19/11/13(水)

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