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水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

ミナリ

ジワジワと心の奥まで浸透していく風景と家族それぞれの感情。自分の知らないものへの拒否反応は、土地だけでなく、人間も同じで、アメリカの大地に韓国野菜の種を植えるのと同じように、韓国育ちのおばあちゃんとアメリカ生まれの孫の間にも芽生えるまでに時間がかかる。 スタジオA24のセンスの良さは、視覚的、聴覚的に人の五感を揺さぶるものを制作すること。タイトルのミナリは韓国語で「セリ」のことで、おばあちゃんが子供たちのためにと、水辺にセリを植えるシーンから、粘り強く生きることや、親から子へ、希望を受け継ぐことにもつながっている気がした。 何より興味深いのは、『ウォーキング・デッド』のスティーヴン・ユァン演じる父親は、子供たちに成功する姿(アメリカン・ドリーム)を見せることが、父の役目だと考え、ハン・イェリ演じる妻は、それにより夫が家族を危険に晒していると怒鳴る普遍的な夫婦の姿。そこに韓国の名女優ユン・ヨジョンがおばあちゃんとしてやってくることで物語の流れが枝葉のように分かれていく。 人と人が出会うことで化学反応が生まれることを物語だけでなく、キャスティングでも見事に表現した大傑作。ユン・ヨジョンが海外の映画賞で名を呼ばれる日がやってくるかもしれない。

21/3/3(水)

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