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植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

生誕100年記念 映画監督 野村芳太郎

『背徳のメス』(7/20〜7/26) 神保町シアター 特集「生誕100年記念 映画監督 野村芳太郎」(7/6〜8/9)で上映 今の医療小説には疎いが、昔、『海と毒薬』『白い巨塔』『華岡青洲の妻』『宣告』『無影燈』など、その手の小説をよく読んでいた時期があった。そのとき出会ったのが黒岩重吾の『背徳のメス』(第44回直木賞受賞作)。そこで描かれる、産婦人科科長、医師、看護婦が交錯するダークな人間関係は、高校生を恐怖のドン底に突き落とした。そのドロドロがあまりにも醜悪で救いがなかったのだ。 映画『背徳のメス』はその忠実な映画化(脚本=新藤兼人)で、舞台は大阪阿倍野区(現在のあいりん地区・釜ヶ崎あたりか?)の病院。主人公の田村高廣が扮した産婦人科医師が殺されかけ、その犯人を捜す過程で複雑な人間関係、場末の病院の闇が見えてくるという物語。正統派の美人女優だった久我美子が、「オールドミスのクソ婆ァ」と罵られる冷淡な看護婦長に扮しているのがショックだった。 名作『白い巨塔』が1966年作品だから、その5年も前に医療過誤事件、病院経営をめぐる金銭欲にまみれた人間たちの生態を赤裸々に描いた本作。さすが野村芳太郎監督! と先見の明を褒め称えたい。

19/7/19(金)

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