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水先案内人のおすすめ

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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

ブルーノート・レコード ジャズを超えて

「ブルーノート・レコード創立80周年」を記念して作られたドキュメンタリー映画。ジャズに精通していない者が案内するのは僭越すぎるのだが、ウェイン・ショーターとハービー・ハンコックの掛け合いトーク、ルー・ドナルドソンの証言があまりにも面白く、かつ人間的、かつ音楽的で素晴らしいので叱責覚悟でしゃしゃり出た次第。 映画は、ロバート・グラスパーを中心にした若手アーティスト達で結成されたブルーノート・オールスターズの『アワー・ポイント・オブ・ビュー』をレコーディング・セッションする映像から始まる。そして第二次世界大戦前夜、ナチス統治下のドイツからアメリカに移住した大のジャズ・ファンのふたりの青年、アルフレッド・ライオンとフランシス・ウルフがニューヨークで小さなレコード会社「ブルーノート・レコード」を立ち上げた1939年へと遡っていく。 これまでにおよそ1000枚のレコードを作ってきたブルーノート・レコードの軌跡を、ノラ・ジョーンズ、ロバート・グラスパー、アンブローズ・アキンムシーレ、ケンドリック・スコットらが語る。その背景に流れるのは『ウン・ポコ・ロコ』(バド・パウエル)、『ブルー・トレイン』 (ジョン・コルトレーン)、『サムシン・エルス』 (キャノンボール・アダレイ&マイルス・デイヴィス)、『モーニン、チュニジアの夜』 (アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ)、『ザ・サイドワインダー』 (リー・モーガン)などブルーノートの歴史に名を刻む名曲たちだ。 監督は、俳優兼ミュージシャンのハリー・ディーン・スタントンの半生を追ったドキュメンタリー映画『Partly Fiction』(日本未公開/2012)で高い評価を受けたスイス生まれのソフィ―・フーバー。彼女は言う。「音楽研究者やジャーナリストのコメントではなく、ミュージシャンたちの証言で構成したかった。彼らの言葉をとおしてブルーノートの舞台裏、各ミュージシャンの創作プロセスを探りたかった。私の目的はより若い観客にブルーノートを届けることで、彼らにブルーノートの音楽が持つ信じられないほど素晴らしい価値に気付いてもらうことでした」。 ヒップホップとジャズの関連を描いたことで、ブルーノート80年の歴史が未来へと繋がったラスト・シーン。ジャズもヒップホップも、自由を求める人間の魂の発露なのだと、本作は訴えている。

19/9/4(水)

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