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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

愛のくだらない

今作で田辺・弁慶映画祭グランプリと映画.com賞をダブル受賞した野本梢監督は、「生きづらさ」を様々な人の視点から繊細に紡ぎ上げる才能を持つ女性であり、彼女の着眼点に毎回唸らされている。 今回は、「女だって好きな仕事でキャリアを積みたいよね?」「子供を持つことが幸せとは限らないよね?」と問いかけるような描き方で、主人公は少しずつさりげなく外野の力で道を外されてしまう。 主人公は強くなくていいし、迷いながらちょっとずつ前に進めばいいんだ、と野本梢監督作品を観る度に気付かされ何故かホッとする。 今回はそんな主人公の彼氏が“まさかの妊娠?”という展開で、男女のスイッチものにも思え、女性の生きづらさだけでなく、男性の生きづらさやトランスジェンダーに対する偏見にもしっかりと目を向け、社会の構図を物語で見せてくれる。 気付いて欲しいのだが、女性が妊娠したらそこでキャリアが一旦途切れてしまう。そこまでして今のキャリアを手放す勇気は男性に果たしてあるのか? 高揚感を得たいから夢を追うことって自分勝手なのか? 仕事と恋愛は両立出来ないのか? そんな、今まで男性に置き換えて描かれることが多かったこれらの問題を女性に置き換えたことで一見斬新に見えるが、実は世の仕事好き、シングル好き女性たちが、ひっそりと抱えている問題に焦点を当てた小さな叫び声のような応援歌。 自分が分からないのが人間という生き物。そこを見事に捉え、人生の分岐点について一緒に考えるような映画なのだ。

21/8/6(金)

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