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水先案内人のおすすめ

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歌舞伎とか文楽とか…伝統芸能ってカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

国立劇場 令和2年10月歌舞伎公演

歌舞伎座に2ヵ月遅れて国立劇場歌舞伎公演の幕が開く。二部制で、それぞれ時代物+踊り、世話物+踊りと、狂言建てを見ても歌舞伎公演らしさも徐々に戻ってきた。当然ながら劇場ごとに、ロケーション、舞台や客席、楽屋などの広さや換気事情も異なるため、どの劇場も感染拡大の状況によっては中止となる恐れもまだまだある。なによりも無事に初日を開け、関係者、客席に感染者が出ず、無事に安全に楽日を迎えることを祈るばかりだ。 第一部は時代物、義太夫狂言で『ひらかな盛衰記』より「源太勘当」。歌舞伎座では『石切梶原』で梶原景時が登場するが、こちらはその息子たち、景季と景高兄弟が登場する。 美男で武芸に秀でる景季と、その恋人に横恋慕し兄にたてつく弟景高。見どころの一つは先陣問答といい、宇治川の先陣争いを源太が物語る場面だ。鎌倉一の風流男と呼ばれ梅が枝を烏帽子に飾った源太。だが宇治川では佐々木高綱に負けた。その真相を母・延寿に語る。恋人の腰元千鳥と平次が義太夫に乗って物語る場面も面白い。 源太に中村梅玉、母・延寿に中村魁春、腰元千鳥に中村扇雀、平次景高に松本幸四郎。 もう一本は新作の舞踊劇『幸希芝居遊』。コロナ禍により長期間舞台に立てなかった俳優たち。その中でも『図夢歌舞伎』など画期的な試みを打ち出し続けた松本幸四郎が、まさに俳優たちがやっと舞台に立てる喜び、芝居ファンが観劇を謳歌する楽しさを感じさせる一本になりそうだ。 第二部は世話物の決定版、『新皿屋舗月雨暈―魚屋宗五郎』。菊五郎劇団が顔をそろえる。 芝で魚屋を営む宗五郎の家に不幸があった。宗五郎の妹お蔦が奉公へ上がった磯部家で殿様に惨殺されたのだ。そのお悔やみの場面から始まる。真相を知り、酒乱の気があるため断っていた酒をついに飲む宗五郎。だが次第次第に酔っ払い、暴れだし、周囲が止めるのも聞かず、酒樽を手に磯部家へ殴り込む。 何十回も何百回も同じ顔触れで上演しているからこそできる、この緻密で生き生きとした市井の人々の風景。まるで宗五郎の家の騒動を、こっそり覗いているような気持にさせられる。また実際には飲んでいないのに、次第に頬や体まで赤らんでくるように見える宗五郎、その凄みを楽しみたい。 宗五郎に尾上菊五郎、家老浦戸十左衛門に市川左團次、女房おはまに中村時蔵。 もう一本は松羽目もので歌舞伎舞踊『太刀盗人』。すっぱ=すりと、すりにだまされそうになる田舎者のコミカルな踊りだ。 すっぱの九郎兵衛に尾上松緑。松緑もコロナ禍の中、俳優たちの素顔が楽しめるオンライン生対談『紀尾井町夜話』などを初め、歌舞伎の灯が消えぬよう精力的に活動し続けた。このおかしくて朗らかな踊りで、気分も一新できるはず。

20/9/26(土)

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